ビタミンD生成・紅斑紫外線量情報

概要

1980年代半ばにオゾンホールが発見され、オゾン層破壊が顕在化しました。それにともなって、地上に降り注ぐ紫外線は、一般的に有害であるという認識が広まってきていますが、同じ紫外線が同時に、人類に必須のビタミンDを体内で生成するという事実もあります。国立環境研究所は国内の北に位置する北海道の落石岬と陸別、南方の沖縄の辺戸岬と波照間および関東地方のつくばの5ヶ所の有害紫外線モニタリングネットワークのサイト (*1)有害となる紅斑紫外線量を常時監視しています。

我々はその有害となる紫外線量をもとに、その紫外線を肌に照射することによって、体内で生成されるビタミンD量を推定するシステムを構築しました。

さらに皮膚に有害となるとされる基準値、最少紅斑紫外線量 (有害となる紅斑紫外線 : MED) にいたる日光照射時間を推定し、上記の日本国内各地で日光を照射したときに、どの程度の紫外線を浴びたらMEDに到達するか、または一定量のビタミンD量を体内で生成するにはどのくらいの時間、日光照射したらよいか、それぞれの季節、時刻にその目安を示すこととしました。

なお、この計算に必要な諸要素は、文献などをもとに現在もっとも信頼できると考えられる数値などを適用しています (文献1文献17を参照)。

また、有害紫外線モニタリングネットワークで観測されている紅斑紫外線量 (有害紫外線) の測定精度は、10 % 程度であると考えられています (有害紫外線モニタリングネットワーク活動報告:CGER-M017-2005、157頁参照)。

なお、「有害紫外線モニタリングネットワークUVインデックスの求め方」で解説しているように、紅斑紫外線量はA領域紫外線計とB領域紫外線量の観測データに観測時のair massとオゾン全量による修正を加えて算出しています。オゾン全量は衛星観測データ(NASA/OMPS, 2021年2月まではNASA/OMI)を用いていますが、データ取得に数日の遅れがあります。2021年2月までは入手できる最新のオゾン全量データを用いていましたが、数日の遅れは時に大きな誤差を招き、紅斑紫外線量には最大10%程度の誤差を生じていました。オゾン全量はむしろ気候値を用いたほうが誤差を少なくできることから、 2021年3月からは速報値の算出に当たっては気候値を用い、当日のオゾン全量がほぼ確実に入手できる10日後に再処理により過去の紅斑紫外線量を再算出することとしました。「過去データの検索・表示」で表示する10日以前の過去のグラフは、再処理された紅斑紫外線量に基づく値を示します。

(*1)
観測局詳細は「有害紫外線モニタリングネットワーク:観測局データ」をご参照下さい。