観測方法

観測項目

水質 | 生物 | 底質土壌 | 大気

表1 水質項目

項 目方 法
採水(湖水) 通常はゴーフロー採水器 (10L) を使用した。特定の測定項目に関しては、アクリル採水器、ダイアフラムポンプによる吸引、ガラス採水器に直接採取するなどの方法をとった。試料水は、測定項目別にフッ素樹脂製ボトルの他、ポリエチレン製、ポリプロピレン製、ガラス製ボトル等に分取した。
採水(渓流水) 渓流水を時間分画型の自動採水器に常時導入して採水。自記流量計による流量についても観測。
水位 自記水位計あるいはメモリー式水位計を湖岸に設置し連続測定した。
透明度 直径30cmのセッキ板をおろし、目視による。白色及び黒色を使用。
水中光 水中輝度計、水中照度計、水中スカラー照度計を用いる。光源を備えた分光式吸収・散乱計をおろす方法を併用。試料水をろ過したフィルタを用いた吸光度測定や積分球を備えた紫外可視分光光度計による散乱測定を併用。
水色 フォーレル水色標準との比較もしくは分光測色計による直接計測。
湖流 電磁式流向流速計を水中におろして観測。
水温 転倒温度計、温度センサーロガー、CTDをおろす方法を併用。温度センサーロガー係留による連続観測。
電気伝導度(EC) 電気伝導度計もしくはCTDを用いる。
pH 採水直後ないし恒温槽内でガラス電極を用いた電位差測定。pHセンサーをおろしながら現場測定した場合もある。
溶存酸素(DO) 採水日のうちにウィンクラー法により固定、滴定する。あるいは溶存酸素膜センサー・固体光学式センサーをおろしながら現場測定。
飽和度 溶存酸素量と水温、摩周湖水面 (352m) の高度から計算したもの。
アルカリ度 pH 4.8を終点とする酸滴定。Gran's Plot法による終点判定を併用した。
COD 過マンガン酸カリウム消費量による。
BOD 試水中の有機物が分解される際の酸素消費量による。
栄養塩類 特記しない栄養塩類は、ろ過、分取、冷凍保存した試料水を空気分節型の自動分析機器 (AA) により定量する。硝酸態窒素については、イオンクロマトグラフでも測定した。
全リン、全窒素 分解容器に分取し、ペルオキソ二硫酸カリウムを加え、オートクレーブで分解し、AAで吸光分析したもの。
溶存態全リン、
溶存態全窒素
試料水をろ過後、冷凍保存する。それぞれ全リン、全窒素と同様の操作で分析する。全リンについては、ICP質量分析法(ICP-MS)でも測定する。
懸濁態有機炭素、
懸濁態有機窒素
試料水をろ過したフィルターを元素分析計で分析する。
溶存態有機炭素、
溶存態有機窒素
試料水をろ過したろ液を元素分析計で分析する。
有色溶存有機物質(CDOM) 試料水をろ過したろ液を紫外可視分光光度計で分析する。
懸濁物質量・濁度 ガラス繊維フィルターもしくは一定孔径のフィルターに懸濁物をを捕集し、秤量。濁度センサーロガーをおろしながら現場測定。濁度センサーロガー係留による連続観測。
懸濁物粒径分布 採水試料もしく試料水をろ過したフィルタを灰化、懸濁したものを細孔電気抵抗法(コールターカウンター)により計測。
クロロフィル類 試料水をろ過したフィルターから、クロロフィル類を抽出し、蛍光光度法、あるいは吸光光度法により分析する。クロロフィルセンサーロガーをおろしながら現場測定。クロロフィルセンサーロガー係留による連続観測。
一次生産速度 C-13ラベルした炭酸を添加した湖水の炭酸固定量による。
陽イオン成分 以下の陽イオン成分は,ICP発光分光法 (ICP-AES) による直接分析、炎光光度法 (FES)、フレーム原子吸光法 (FAAS)、イオンクロマトグラフィ (IC) による。
  • Na: 酸を添加し、10倍希釈後(希釈しない場合もある)、AASまたはFES。あるいはICP-AESまたはろ過後ICによる分析。
  • K, Mg, Ca: 酸を添加し、FAASまたはFES。あるいはICP-AESまたはろ過後ICによる分析。
  • Sr, Ba, Si, B: ICP-AESによる直接分析。
陰イオン成分
  • F, Cl, SO42-, NO3-: ICによる。ろ過はした場合としない場合がある。
微量金属成分 pH調整した試料水中の微量金属をオキシン錯体として抽出し、分離濃縮後、ICP-AESで定量。または、必要に応じ濃縮し、ICP-AES、電気加熱原子吸光法 (ETAAS) で定量。GEMS/Water移行後は、酸添加後、必要に応じ濃縮し、MIP質量分析(MIP-MS) もしくはICP-MS(V, Mn, Fe, Ni, Zn, Cd, Pb等)。その他、有機沈殿試薬により共沈濃縮後、固体試料ETAASで直接定量。
  • Al:上記の他、直接真空紫外領域の波長を用いICP-AESで定量。
  • Mn, Fe, Zn: 直接ETAASまたは濃縮後ICP-AES分析。あるいは、上記のMIP-MS、ICP-MS法。
  • Hg: 硫酸酸性Sn(II) による還元気化をおこない、Hgを金トラップ後、He-MIPに導入する。パージアンドトラップ原子蛍光法でも測定した。
CH4 CH4をパージアンドトラップ法で捕集し、GC-FIDで定量。
VOC類 ガラス容器に密栓し、パージアンドトラップ法で捕集し、GC/MSで定量。
CO2(t) ガス膜電極での電位測定またはイオン排除型のICで定量。
He, Ne 銅管に採取した試料から希ガスを脱気捕集し、専用の質量分析計で定量。
BHC類 試料水をヘキサン抽出し、濃縮、夾雑物を除去して検液を調製。定量はGC-ECDで行う。GEMS/Water移行後は、GC/MSにより定量。
POPs類 試料を抽出し、濃縮、夾雑物を除去してGC/MSにより定量。
PAH ガラス採水器から直接抽出し、HPLC-レーザー蛍光法で定量。あるいは、HPLC-蛍光光度法で定量。

表2 生物項目

項 目方 法
採取 植物プランクトン・ピコ植物プランクトンは採水試料を分取し、船上で固定した。動物プランクトンは一定量の湖水をプランクトンネットでろ過して捕集した。このほか、プランクトンネットを鉛直引きすることも併用した。ベントスはエクマンバージ式採泥器で採取した泥をふるい分けて採取した。魚類は刺し網もしくは釣りによって、ウチダザリガニはカニ籠もしくは手づかみで採捕した。昆虫はトラップによって捕集した。
動物プランクトン 光学顕微鏡での計数。
植物プランクトン 光学顕微鏡での計数。
ピコ植物プランクトン フィルター捕集後、蛍光顕微鏡での計数。
全菌数 フィルター捕集後、アクリジンオレンジあるいはDAPI染色による直顕法。
生菌数 1/10 Nutrient Broth (Bacto) を用いた最確数 (MPN) 法。
元素組成 抽出あるいは分解後、ICP-AES, ICP-MSで定量。
炭素窒素安定同位体比凍結乾燥試料を元素分析計で燃焼し、生成するガスを同位体質量分析計に直接導入して分析。
Hg安定同位体比凍結乾燥試料を密閉状態で酸分解し、Sn(II)による還元気化を行い、キャリアガスによりマルチコレクター型ICP-MS(MC-ICP-MS)に導入して分析。
POPs類 試料を抽出し、濃縮、夾雑物を除去してGC/MSにより定量。
PFC 試料を抽出し、濃縮、夾雑物を除去してLC/MSにより定量。

表3 底質土壌項目

項 目方 法
採泥1985年までは、アクリルまたはアルミニウム製のコアパイプを有する羽根状のキャッチャーを持つ重錘式柱状柱泥器、それ以降は移動するキャッチャー部をもつ重錘式採泥器。底生動物採取、保存試料用にはエクマンバージ式採泥器で採取した。
間隙水採取切断したコアから加圧して採取、ろ過して酸添加。
土色土色帳との対応による。
底質国土地理院発行の湖沼図による。
粒度分布粒子の沈降に伴う光透過度の変化を粒径に対応させる。
イオン成分水抽出し、ICで分析。
元素組成TC, Nは加熱-GC-TCD方式の元素分析計で定量。その他は、抽出あるいは分解後、ICP-AES, FES, ETAAS, ICP-MSで定量。
PAH試料を有機溶媒で抽出、濃縮後、HPLC-蛍光光度法で定量。
鉱物組成粉砕した試料を粉末X線回折装置で分析。
Pb安定同位体比試料を酸分解した後、Pbを分離し、MC-ICP-MSにより分析。
Hg安定同位体比生物試料と同様。
表面組成乾燥した試料をホルダーに固定し、X線光電子分光法で分析。

表4 大気項目

項 目方 法
大気粉じん採取ハイボリュームエアサンプラーに石英フィルターを装填して採取。
雨水・積雪採取現場で採取。BHCの場合、感雨型の自動雨水採取装置を用いた。
大気降下物採取摩周湖外輪山駐車場もしくは美羅尾山頂で湿性乾性沈着物を捕集。
イオン成分雨水をろ過し、ICで分析。
BHC湖水と同様。
PAH底質と同様。
金属成分試料を酸処理した後、ICP-MSにより定量。
Pb安定同位体比試料を酸分解した後、ICP-MSにより分析。
テルペン類試料を現場でTenaxに吸着させ、GC/MS分析。
有機塩素化合物真空ビンに捕集した試料の一部を直接GC-ECDで分析。
流跡線解析風向、風速のメッシュデータをもとに数値計算したもの。国立環境研究所と北大の2機関で、別期間、別プログラムを用いて計算した。