ビタミンD生成・紅斑紫外線について
CIE作用曲線 (人体に有害な紫外線とビタミンD生成紫外線)
CIE (国際照明委員会 : 文献20)(*1) によると、図1に赤い実線で示された作用曲線は、紅斑紫外線の有害性の波長分布を示します。地上に届く紫外線うち、短い波長域で、特にB領域紫外線 (290 ~ 320 nm) で効果的に人体に種々の害を与えます。
一方、図中の青い点線の作用曲線は、体内でビタミンD3 (単にビタミンDと呼ぶ) を効果的に生成する波長分布となっています。
すなわち、その波長での紫外線に含まれる有害な成分と、体内でビタミンDを生成する紫外線の成分の割合を示していて、有害となる紫外線の波長域とほぼ一致しています。これらの作用曲線は最大値 (298 nm) によって規格化されていて、地上に到達する紫外線スペクトルにしたがって紫外線に含まれる有害な成分 (紅斑紫外線) と、体内でビタミンDを生成する成分 (ビタミンD生成紫外線) が抽出されます。
この図からわかるとおり、太陽由来の紫外線の中には、有害な紫外線と、健康に寄与するビタミンDを生成する紫外線とが同じ波長域の中に存在することになります。つまり、一方で人体に有害であるものの、同時に同じ紫外線がビタミンDを生成するという働きを示していることになります。
- (*1)
- Commission Internationale de l'Eclairage : 国際照明委員会
ビタミンD生成紫外線量の推算
つくばにおける2005、2006、及び2007年の晴天日、124例のうち9時、12時、及び15時、さらに札幌、那覇を含めたすべての数値計算によって得られた紫外線の中に含まれるビタミンD生成紫外線量と紅斑紫外線量の関係を、図2に示します(文献1、17)。この結果から、一定量の紫外線を照射した場合に、それぞれの作用曲線のスペクトルの特性から、ビタミンD生成紫外線の紅斑紫外線に対する割合は2倍程度に相当することが判ります。これらの関係から、国民にUV Indexなどで周知している紅斑紫外線量が判れば、ビタミンD生成紫外線量を一義的に換算することが可能となり、従ってビタミンD生成に必要な日光照射時間を容易に推定することが可能となります。
なお、図に示されているように紅斑紫外線が 0.04 W/m2 付近より大きい値ではほぼ直線で近似できることが判ります。すなわち、ビタミンD生成紫外線量をIVD、紅斑紫外線量をIEryとすると
IVD = 2.11 IEry - 0.027(IEry ≥ 0.04 W/m2)また、0.04 W/m2付近より小さい値では0点を通る2次式で表現することができます。すなわち、
IVD = 16.74 IEry2 + 0.81 IEry(IEry < 0.04 W/m2)図のように紅斑紫外線量の小さいとき、たとえば 0.05 W/m2 付近では、推定誤差は最も大きくて 8.2 % になりますが、0.10 W/m2 では 3.6 %、0.20 W/m2 では 1.0 %、0.3 W/m2 では 0.1 % と、有害紫外線量が大きくなるにつれて推定誤差は小さくなることが判りました (この誤差は、おもに大気中のオゾン量の変化と、太陽天頂角の変化に依存します)。
ビタミンD量を推定するシステム
人体 (皮膚) で生成されるビタミンD量は次式で表すことができます (文献17)。
QD = qe・Stype・Sder・tex・IVDここで qe、Stype、Sder、tex はそれぞれ、ビタミンD紫外線による体内でのビタミンDの生成率、スキンタイプの効果、露出した皮膚面積、及び日光照射時間を示します。この場合の qe は、(文献23) にしたがって用いられています。また、IVD はその時々のビタミンD紫外線量を示します。逆にIVD、Stype 及び Sder が与えられ、必要としているビタミンD量、QD を与えると、それに対応する日光照射時間 tex を計算することができます。