流跡線解析では、大気の塊を質点とみなし、その移動軌跡(流跡線)を風向きなどの気象データを用いて計算することができます。この解析には、国立環境研究所(NIES)地球システム領域(ESD)地球環境研究センター(CGER)が開発した METEX (Meteorological Data Explorer) を使用しています。
流跡線解析を用いると、例えば、高濃度の温室効果ガスや大気汚染物質が観測されたとき、その空気塊がどのような経路で観測地点まで運ばれたかを推定することができます。
下の図は、ある年の2月と8月に波照間ステーションの上空を通過した流跡線を示したものです。波照間ステーションでは、毎年、秋から冬にかけてCO2濃度の増加が観測されていますが、これは陸上生物の吸収量の減少による自然増加に加えて、中国からの大気流入による急増が関連していることが分かります。流跡線解析を用いることで、CO2濃度が他国の経済活動の影響を受けて変動していることが推測できます。