METEXについて

大気塊の流跡線を計算するMETEXでは、大気塊の位置の時間変化を気象データを使って算出します。以下の手順で、気象データの時間・空間補間と、大気塊の動きを推定するための時間積分を繰り返し行います。

  1. 初期条件となる緯度、経度、高度、時刻を指定
  2. 指定した時刻の前後にある気象データを読み込み、指定した位置(緯度、経度、高度)を囲む3次元格子を求める
  3. 2つの時刻の気象データに関して、指定した位置での気象値を3次元格子の8つの頂点を用いて空間的に補間
  4. 空間補間された2つの時刻の気象値を時間的に補間することで、指定した時刻における大気塊の位置での気象値を求める
  5. 4で求めた時刻・位置における風速を用いて積分のタイムステップを推定
  6. 指定した移動経路算出モデルに従い、積分解法によりタイムステップ経過後の大気塊の新しい位置を求める
  7. 2~6を指定された期間繰り返す

気象データ

流跡線計算には、米国NCEP (National Centers for Environmental Prediction) が提供する気象データを使用しています。

使用データ
1979~2010年
NCEP Climate Forecast System Reanalysis (CFSR) 6-hourly Products, January 1979 to December 2010 (DOI: 10.5065/D69K487J)
2011年~現在
NCEP Climate Forecast System Version 2 (CFSv2) 6-hourly Products (DOI: 10.5065/D61C1TXF)
時間分解能 3時間
空間分解能 0.5 x 0.5度
鉛直レベル 1000, 975, 950, 925, 900, 875, 850, 825, 800, 775, 750, 700, 650, 600, 550, 500, 450, 400, 350, 300, 250, 225, 200, 175, 150, 125, 100, 70, 50, 30, 20, 10, 7, 5, 3, 2, 1-hPa

移動経路算出モデル

・3次元(kinematic)法

『大気塊は周囲の風の水平方向成分(\(u,v\))及び鉛直方向成分(鉛直p速度)のみの影響をうけて移動する』と仮定して、移動経路を算出するモデルです。

任意の位置の気象値は、ジオポテンシャル高度、温位、圧力、シグマなどで表される任意の点が含まれた3次元格子に対して、4つの鉛直軸上で鉛直方向の上下の格子点を用いて補間し、ついで緯度・経度方向に補間して導出します。ここでは、鉛直方向、水平方向ともに気象値の変化は線形であると仮定しています。

Kinematic model

・等温位法

『大気塊は、鉛直方向に1000hPa面まで乾燥断熱的に移動させた場合に示す温度(温位)を保持して移動する』と仮定して、移動経路を算出するモデルです。

最初に3次元(kinematic)法の場合と同様の補間方法で、大気塊の初期の高度を温位に変換します。

次に、4つの鉛直軸上で大気塊と同じ温位をもつ4点を含む等温位面の上ではじめに求めた大気塊の位置での推定高度が、大気塊の高度と、あらかじめ定めた範囲内で一致するように、温位を繰り返し調整します。

温位を一旦確定させたら、これを水平な平面とみなして風速の\(u\)成分\(v\)成分を補間します。気象データセットにおける格子は一般的に水平方向にくらべて鉛直方向がきわめて小さく、等温位面はフラットであると仮定できます。

Isentropic model

積分解法

この計算では時刻 \(t\) から \(t+\Delta t\) の間の大気塊の移動を、Petterssen法 (1954, Weather Analysis and Forecasting. McGraw-Hill Book Company, New York. p221-223) を用いて計算します。
時刻 \(t\) における位置ベクトルを \(\boldsymbol{L}(t)\)、時刻 \(t\), 位置 \(L\) における速度ベクトルを \(\boldsymbol{Γ}(L,t) \)とすると、時刻 \(t+\Delta t\) の大気塊の位置ベクトル \(\boldsymbol{L'}(t+\Delta t)\) はまず、

$$ \boldsymbol{L'}(t+\Delta t) = \boldsymbol{L}(t) + \boldsymbol{Γ}(L,t) \times \Delta t $$

で推定できます。時刻 \(t+\Delta t\) の大気塊の位置ベクトル \(\boldsymbol{L}(t+\Delta t)\) は、位置 \(L'\), 時刻 \(t+\Delta t\)における速度ベクトル \(\boldsymbol{Γ}(L',t+\Delta t)\)を用いると、

$$ \boldsymbol{L}(t+\Delta t) = \boldsymbol{L}(t) + 0.5 \times (\boldsymbol{Γ}(L,t)+\boldsymbol{Γ}(L',t+\Delta t)) \times \Delta t $$

で求められます。

積分のタイムステップ

計算の精度および速度を向上させるため、この計算では積分のタイムステップを自動的に変えるFLEXTRAの方法を用いています。積分時間\( \Delta t \)は、次式のように、風速の水平成分(\(u,v\))に応じて決まります。

$$ \Delta t = \frac{\Delta D}{CFL \times \sqrt{u^{2} + v^{2}}} $$

ここで \(\Delta D\) は空間の格子間隔、 \(CFL\) は Courant-Friedrichs-Lewy 条件を表す指標で、METEXでは\(CFL = 5\) を用いています。

参考文献

流跡線計算の手法や計算結果に関する詳細は、以下の論文をご覧ください。