広域把握に向けたリモートセンシング
リモートセンシングによる森林炭素収支の推定
渦相関法を用いた二酸化炭素(CO2)フラックス観測などの限られた面積で得られたデータのスケールアップ手法として衛星や航空機によるリモートセンシングの活用が期待されています。リモートセンシングは、非破壊で反復が可能なモニタリング手法であり、これまで人力に頼ってきた調査に変わる手法としても期待されています。地球環境研究センターでは、衛星データの収集・解析を始めとして、フラックス計測タワーに設置した分光放射計やデジタルカメラを利用して、森林生態系の構造や生理活性を非破壊・非接触で自動観測する、いわば近接リモートセンシングまでを含んだ広範囲なスケールでのリモートセンシングを展開しています。
観測内容
近接リモートセンシングとして、富士北麓や天塩サイトでは、樹冠上および林床において分光放射計を用いた波長別放射特性の観測、各種植生指標のモニタリングを行っています。また、各サイトで、自動撮影型のデジタルカメラの画像から光合成機能の変化を検出する手法の開発・改良を行っています。
フェノロジー観測
フェノロジー(Phenology: 生物季節(学))は、季節の移り変わりに伴う動植物の行動や状態の変化と気候あるいは気象との関連を研究する学問のことです。植物の発芽、展葉(開芽)、開花、紅葉、落葉などの変化は気象条件と密接に関わっています。近年の気候変動はこのようなフェノロジーにさまざまな影響を及ぼし、春の展葉や秋の紅葉時期が変化しています。植物のフェノロジーは気候変動影響の指標として重要であるとともに、陸域生態系の炭素収支や大気CO2濃度に影響を与える主要な要因でもあります。
富士北麓
*カラマツ林のフェノロジー上向き、下向き、横向き(魚眼レンズカメラにより撮影)
魚眼レンズによる毎日の写真はPEN(Phenological Eyes Network)のホームページへ