日本-オセアニア航路

概要と成果

日本-オセアニア航路では1992年からボトルサンプリングによる洋上大気観測を日本郵船(株)所属のコンテナ船「白馬丸」等で開始し、2001年10月から半年間(株)商船三井所属のコンテナ船「GOLDEN WATTLE」で洋上大気と海洋表層水中の温室効果ガス連続観測を、2003年から(株)フジトランスコーポレーション所属の自動車運搬船「FUJITRANS WORLD」で洋上大気の温室効果ガス濃度の連続観測を実施し、2005年からトヨフジ海運(株)所属の「TRANS FUTURE 5」(写真)で再び洋上大気と海洋表層水中の温室効果ガス連続観測を開始して現在も運用中です。本船は就航以来観測を行なっており、2023年末までに約150往復で観測を実施しました。

TRANS FUTURE 5
写真 TRANS FUTURE 5

結果の一例として「TRANS FUTURE 5」による観測で明らかになった洋上大気中二酸化炭素(CO2)濃度の緯度-時間変化を図に示します。季節変化の振幅は北緯30度付近が一番大きく、低緯度に向かって小さくなる傾向が見られますが、これは陸上生物の光合成活動によるCO2吸収や呼吸によるCO2放出というプロセスが南半球に比べて北半球で盛んであることを意味しています。また経年的な傾向を見てみると、どの緯度帯でも過去13年間で30 ppm以上のCO2濃度増加が認められることに加えて、常に北半球の濃度が南半球より高いことから、北半球で排出された人為起源CO2が南半球へと輸送されていることが分かります。このように洋上大気中のCO2濃度がどのように変化するか捉えることで、CO2の吸収・排出のプロセスを把握することが可能になります。今後も本航路で大気中CO2濃度観測を継続することにより、2015年に採択されたパリ協定の下で各国が取り組むCO2削減を検証することが期待されます。

CO2濃度の緯度-時間分布
図 CO2濃度の緯度-時間分布