熱帯林の持続的管理の最適化に関する研究(1999年度~2001年度)
熱帯林の持っている諸機能のうち、特に炭素吸収機能に焦点をあて、マレーシア半島部パソ保護林内においてマターフロー的視点から地上部現存量推定およびその変化、土壌呼吸量について調査を行った。その結果、1998年における天然林内の直径5cm以上の 樹木の地上部バイオマスは402.0Mg/haであり、1994年から1998年の4年間に28.4Mg/ha純減していることがわかった。この値は1973年に同じプロットで測定された値と比べても73.1Mg少ないことがわかった。この森林生態系全体から1994-1996年の期間中に吸収された炭素量を、分解速度を変化させて試算したところ 森林全体の見かけの分解係数(k)が0.294yr-1より大きければ系は炭素放出源に、0.294yr-1より小さければ炭素吸収源となることが分かった。分解速度を既存の資料のみで推定するのは 困難であると判断したため、リター及び倒木分解、土壌呼吸についても調査を開始した。 とくに土壌呼吸については方法論的な不備のため再検討が必要であると判断したため、パソ保護林内の林冠ギャップ下及び閉鎖林冠下に調査プロットを設け、連続測定を行った。その結果閉鎖林冠下での土壌呼吸速度の日変化が不明瞭であったのに対して、ギャップ環境下では、地温のわずかな上昇に伴い土壌呼吸速度もわずかに増加した。土壌呼吸速度の空間的バラツキは閉鎖林冠下および ギャップ林床下ともに非常に大きかった。この大きな空間的バラツキは、ギャップ林床下では地温、閉鎖林冠下では地温と根のバイオマス、土壌含水率の違いによってもたらされている可能性が示唆された。