セマンコックの様子
写真1：調査地への入り口
写真2：調査地の中心
首都のクアラルンプールから北へ約60kmのセマンコック保護林内に，尾根から谷までを含むように６haの調査地を設置した（図１）。FRIM（マレーシア森林研究 所）から車で１時間２０分(写真1），さらに歩いて12-3分で調査地の中心に着く(写 真2)。トラップの回収と実生のセンサスを考え，FRIMから日帰りが可能な距離に設置した。セマンコック保護林は，狭い尾根に発達した典型的な丘陵フタバガキ林で，セラヤ(Shorea curtisii)が優占し，林床にはパーム(Eugeissona tristis)が多い(図2)．この密に生育する林床性パームは樹木の更新を阻害すると従来から言われている．半島マレーシアには多くの保護林があるが,この保護林は狭い尾根に発達した典型 的な丘陵フタバガキ林である。ただし道路から近いので多少の人為的影響があること，30数haの狭い保護林なので，シカやゾウなどの中・大型動物の種子散布・被食への関与が研究できないことなどの問題がある。しかし長期調査地なので保護林で伐採の心配がないこと，交通の便が良いこと等の配慮から選択した。
写真：セマンコック保護林
樹木の全生活史にわたっての個体群動態デ－タをとるため、調査地の基本的なデザ インは，日本の落葉広葉樹林に設置した6haの調査地（In Nakashizuka, T. and Y. Matsumoto (eds.), 2002. Ecological Studies,vol. 158 Springer-Verlag Tokyo. ）と同じであるが，種子トラップ，実生方形区の数と位置や稚樹方形区の形が違っている。生活史の各ステージを7段階に区分した。20ｍごとと、その中心に設置した100個の種子トラップおよび１ｍｘ１ｍの方形区で，ステージ１の種子とステージ２の実生の生存率を調べた．また１０ｍごとに設置した600個の１ｍｘ４ｍの方形区で，ス テージ３，４，５にあたる稚樹のセンサスを行った。ステージ６（幼木）と７(成木 ）の，dbh（胸高直径）＞5cm以上のすべての樹木の位置と胸高周囲長を測定し た．またギャップの調査と更新に大きな影響を持つと考えられパーム(Eugeissonia tristis）の分布調査を6haの全域で行なった。樹高５ｍと１０ｍの２つにギャップを 分類し，５ｘ５ｍ方形区ごとにギャップか否かを記載した。パームは各方形区ごとに 個体数を記載した。緩斜面にある大型のバンブーの分布も合わせてチェックした。こ れらの結果は以下の公刊物を見ていただきたい。
K.Niiyama, K.Abd. Rahman, S.Iida, K.Kimura, R.Azizi, S.Appanah. Journal of Tropical Forest Science 11：731～745 (1999). Spatial patterns of common tree species relating to topography, canopy gaps and understorey vegetation in a hill dipterocarp forest at Semangkok forest reserve, Peninsular Malaysia.
K.Niiyama, K.Abdul Rahman, K.Kimura, T.Tange, S.Iida, E.S.Quah, Y.C.Chan, R.Azizi, S.Appanah. Research Pamphlet. No. 123. Forest Research Institute Malaysia (1999). Design and methods for the study on tree demography in a hill dipterocarp forest at Semangkok forest reserve, Peninsular Malaysia.
図１:セマンコック保護林に設定した６ヘクタールの長期生態観察用試験地(200m×300m）
図2：丘陵フタバガキ林の優占種: Shorea curtisii(フタバガキ科)と尾根に優先するベラタンパーム (Eugelissona tristis) の分布。
黒丸のサイズはShorea curtisiiでは直径を、Eugelissona tristisでは 5m×5m 方形区内の個体数を示す。