富士北麓サイト

観測概要

地球環境研究センターでは、1999年度より北海道苫小牧市郊外に広がるカラマツ林で森林生態系の総合的な観測研究を実施してきましたが、2004年9月に来襲した台風の被害により、当該森林での観測継続が不可能になりました。これに替わり、山梨県富士北麓に広がるカラマツ林(富士北麓フラックス観測サイト)で森林生態系の総合観測を2006年1月に再開しました。当観測地では、森林生態系の炭素固定量を、渦相関法による二酸化炭素(CO2)フラックス観測、森林植物・土壌のCO2交換プロセス(光合成、植物呼吸、土壌有機物の分解)の積み上げ、樹木の生長量・落葉落枝量からの推定、およびリモートセンシングによる推定と、異なる手法で算出し、それぞれの手法の特徴を活かして、森林の炭素吸収機能を多面的に評価・検証するなど、多分野の調査観測を統合的に実施し、森林生態系の炭素固定機能の定量的評価手法の確立を目指しています。また、新しい観測手法を用いてメタンや生物起源揮発性有機化合物などの、温室効果ガスや気候変動に直接的あるいは間接的に影響を与える成分の交換量とその変動特性の評価を行うなど、森林生態系と大気の間の物質交換の研究の総合的観測研究拠点として整備をすすめています。

観測環境

所在地 山梨県富士吉田市上吉田字河原
緯度経度:35º 26' 36.7"N, 138º 45' 53.0"E
標高:1050~1150m
土地 斜度:3~4度
土質:富士山の粗粒火山灰土
森林 優占種:カラマツ人工林
植樹:1950年ごろ
樹高:20~25m
面積:150ha
群落構造:フジザクラ自生
林床植生:広葉植物
年平均気温 8.8℃(2006-2010年平均)
年間降水量 1715mm(2006-2010年平均)

観測施設

観測塔(1塔)
(機器設置図)
アルミ製組み立て足場(約32m高)。
頂部に伸縮式ポ-ルを設置。
渦相関法によるCO2/H2Oフラックス計測システム、各種気象要素モニタリング用のセンサ、リモートセンシング関連の測器類を設置。
林内微気象観測用ステーション(8式)
(配置図)
観測塔周辺の林床に林内微気象・土壌内部の環境観測設備等を設置。
土壌・林木のCO2交換量観測システム(1式) 観測塔周辺の林床やカラマツにCO2交換量観測用チャンバーシステム群を設置。
計測室(1室) 仮設小屋(約10m2)に観測データ収録及び観測システムの制御装置類を配置。

観測内容

測定 項目 数量 場所・観測高度(m)
渦相関法 3次元風向・風速 1 35
CO2/H2O濃度変動(オープンパス) 1 35
CO2/H2O濃度変動(クローズドパス) 1 35
CO2/H2O濃度変動(エンクローズド) 1 35
濃度 CO2濃度プロファイル 10 35, 32, 27, 22, 16, 10, 4.5, 2, 1, 0.5
チャンバー法 自動開閉式大型チャンバーシステム 24 林床
フェノロジー 魚眼カメラ 6 32, 22, 2(2地点), 2(回転式)
デジタルカメラ 4 26(N), 24(E, N), 23(W)
気象 全天日射 下向 6 32, 2(5地点)
全天日射 上向 3 30, 2(2地点)
放射収支 3 32, 2(2地点)
光合成有効放射(PPFD)下向 6 32, 2(5地点)
光合成有効放射(PPFD)上向 4 30, 2(3地点)
直達/散乱分光放射 1 32
分光放射 下向 2 32, 2(回転式)
分光放射 上向 2 30, 2(回転式)
直達放射スペクトル 1 32
気温・湿度 10 35, 32, 27, 22, 16, 10, 4.5, 2, 1, 0.5
2成分風向・風速 7 32, 27 ,22, 16, 10, 4.5, 2
気圧 1 2
降水量 1 32
積雪深 1 2
地温 13 0(3地点), 0.02(3地点), 0.05(3地点), 0.15, 0.3, 0.6, 1
土壌水分 7 0(3地点), 0.1(2地点), 0.2(2地点)
地流熱量 3 0.02

各種研究機関との共同研究

項目 実施内容
群落スケールでのメタンフラックス観測 簡易渦集積法とレーザー分光型分析計による
土壌メタンフラックス観測 自動チャンバーとレーザー分光型分析計による
群落スケールでの生物起源揮発性有機化合物(BVOC)のフラックス観測 簡易渦集積法によるサンプリングとラボ分析による
エアロゾルサンプリング ハイボリュームサンプラーによる

観測結果

関連写真