熱帯林の持続的管理の最適化に関する研究(1999年度~2001年度)
マレー半島の丘陵フタバガキ林に設置した2つの試験地および低地フタバガキ林に設置したいくつかの試験地で研究を行った。丘陵フタバガキ林の優占種であるセラヤは胸高直径が50cmを越えると 高い割合で開花する事が明らかになった。しかし択伐林では、50cm以上の個体が少なく、遺伝子の交流が難しいことが示唆された。実際、天然林では平均他殖率が87.7%なのに対し、択伐林では40.9%と他殖率が明らかに低かった。また花粉流動距離をDNA分析で推定すると、天然林では1.1m~167.5mの範囲で花粉流動があり、 平均は28.3mであった。一方、択伐林では8.0m~363.9m(平均102.0m)の範囲で花粉の飛散があった。 このように択伐の影響が開花個体数の減少を通じ、花粉による遺伝子の交流にも影響することが明らかになった。 さらに野生生物として、種子の分散や貯蔵に大きく影響する、リス類を中心に調査を行った。Callosciurus prevostii, C. nigrovittatus, C. notatusの3種が樹上で捕獲された。これら近縁3種間には地上利用性の程度に有意な差が認められた。以上から択伐後45年を経ても森林の林冠構造が異なり、リス類の組成と行動に影響が残っていると推測された。